社名に込めた思いを実現するために
私が青年時代より師事する恩師に、この会社の名前を付けてもらいました。それが「末弘不動産」です。その時、先生はこんな話をされました。
「ハーバード大学のビジネススクールの教材に、雨傘の話がある。これはデパートで、急に雨が降ってきたとき、当然に傘の需要が生まれる。その場合、傘の値段を上げるべきか、下げるべきかを議論させるそうだ。君はどちらが正解だと思う?」
私は、値段を上げると利益は大きくなるが、売れる数は減るかもしれない。逆に値段を下げると利益は下がるが、より多く売れるだろうと考えていました。すると、先生は
「君の会社は、雨が降ってきたらお客さんに傘を無料で貸し出す会社にしなさい」
私は、先生にどういう意味かを尋ねました。すると、先生は次のように説明されました。
「『タダで傘を配る会社』の実例がある。ある地方のスーパーの話だ。ある夏、その地域が水不足にみまわれて、水道が出なくなった。当然に水がなければ、日常の生活ができない。だから日々スーパーに来るお客さんの関心も、夕飯のおかずどころではなく、まず『どうやって水を確保するか』という悩みに変わった。
その時このスーパーでは、敷地内の井戸を開放して、お客さんに無償で水を提供した。商品を買ってくれたかどうかは問わず、来店した人には分け隔てなく水を提供した。ところが、あまりにも多くの人が押し寄せたため、給水が間に合わなくなった。そこで、初めは夜間だけの給水だったが、店内の冷房をすべて止めて、朝一番から給水に専念することにした。
冷房を止めた店内は蒸し風呂のようになり、気温も上昇した午後には生鮮食料品の販売をあきらめ、店を閉めることも覚悟したそうだ。午前中でも蒸し風呂の中で買い物をする人などいないだろう。売り上げゼロの危機。しかし、そのスーパーの経営者は『今、お客さまは何を一番求めているのか』を考え、決断した。
するとどうだ。蒸し風呂になった店内に、お客さんが溢れるほど入り、買い物をしているのだ。次の日も、その次の日もお客さんは増え続け、マスコミの取材がくるほどだった。
冒頭の議論の第三の選択肢『タダで傘を配る』の実例が、このスーパーの行動だ。困っている人には無償で傘を持っていってもらう。一見、損なやり方に思うかもしれないが、真実はその反対なのだ。打算的でなく、純粋に相手のためを思ってやる。これが、会社が永続し、末弘がりに発展する秘訣だ」
私は、恩師よりこの話を聴き、本気でこんな会社にしたいと思いました。
名に恥じないよう、ご縁をいただいたお客様のために今の自分に何ができるか。真っすぐにこれだけを考え一生懸命がんばってまいります。